たちばな

                   
三浦しをん『政と源』

久し振りに一般文芸小説を読んだ気がするけど、もう思うところあったり幸せが嬉しかったりで大号泣しながら読みました。

73歳老人男性二人と二人の周辺の人々を描いた作品。適当なところもあるけど人好きのするつまみ簪職人の源さんと、元銀行マンで仕事人間だったから家族と没交渉でプライドが高い政さんの死に際かもしれないけど日常生活のお話。
私は性格上政さんに似てるわ…と思いながら読み進めていったのだけれど、これくらいのお爺ちゃんとして描かれてると、「このプライドが高くて小心者という難儀な性格は見ててイラつくけど、本当如何ともしがたいのよね…」と嘆息することもなく、「まったくもう!素直になればいいのに!」と思える。難しく考えず素直に相手に求めるだけでだいぶ解決しそう。実際自分のために何のきっかけもなく素直になるのはだいぶ難しいけど、他人の手助けのために追い詰められて毎日別居中の妻に手紙送ったりしてて、上手くいったよね。

政さんの仕事人間で退職した頃に家庭に見向きもされなくなるという状況も、とてもシンパシーを覚えるというか、まあ結婚できるか分からないけど結婚したとしたらありえるなあという流れなのでとても身につまされた。やっぱり感情でも日々付き合うのが大事だよね。

あと、3万円が年金と貯金暮らしでは大金という描写があって、まあ私にとっても大金ではあるけど老後の資金を切り崩せば捻出できる額だから、そうなのかと純粋に知った。そして、世の中の世代闘争的な話は単純に老人と若者がお互いのリアルな暮らしや葛藤を知らないから起こるんだろうなあと思った。じいちゃんばあちゃんと20代の孫って、実はお互いの生活がリアルに感じられるほど近くない。だけど、老人も切り詰めて身寄りがなく孤独を噛み締めてるという場合もありながら生きているとちょっとでもリアルに感じられたら、年金とか社会保障とか、まあ給与から天引きされた税金を配分してもいいかもねと思えそう。読了直後だから言えてるだけかな。

この高齢社会のご時世、じいちゃん主人公で、こんなにも若者(わたし)が熱くなれたり、世代の断絶を少し乗り越えさせてくれる小説を送り込んできたしをんさん凄いなーと思った。きっとご老人が読んでも共感できるんじゃないかなあ。読んでよかった。
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